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学生さん向けのLC/MS技術指導

以前のホームページで掲載していたブログを、少しずつこのページで再投稿しています。今回は、数年前まで2年間ほどに渡って行っていた、早稲田大学の或る研究室の学生さんたちに行っていただLC/MS技術指導についてです。

 

この技術指導の依頼は、理工学部のある教授から(大学としてではなく)個別に受けていたものです。天然物から薬理作用をもつ化合物を探索する研究を行っており、微量で活性をもつ化合物を完全に単離する前の段階で、高分解能LC/MS/MSを用いて、ある程度の構造推定を行っています。

 

その中で、LC/MS/MSを単に分析ツールとして使うだけでなく、装置の構造や原理を理解し、装置の性能に頼りきることなく自分自身でデータの信頼性を担保できるようになって欲しいと言う教授の考え方に共感して、格安で指導を引き受けていました。金銭的に余り余裕がない研究室で、現在では依頼がありません。

 

主な指導対象は、この時は4年生7名中の3名。今の時期は、大学院修士2年(M2)と学部4年(B4)の修論&卒論準備のためのデータ測定が多くなりますが、他の学生の試料を預かってきて測定するだけにならないように、データをしっかり検証できるように、それを学生達がちゃんと意識するように、気を配っていました。

そう言う意味では、指導の日は多少装置の調子が悪い方が良い訳です。その原因を考えさせられますから。

 

で、この時は都合良くチョッとしたトラブルがありました。良くありがちな液漏れですね!

 

測定は、東京女子医大と早稲田大学の共同施設(TWins)にあるSciexのQTOF、TripleTOF4600をお借りします。装置のセットアップや測定は、4年生全員既に問題なくこなします。セットアップが終わった頃様子を見に行くと…

 

4年生:いつもよりカラム圧が低いんですよ。

私:そりゃあ、どっか漏れてんじゃねーの?

 

ほどなく、HPLCからエラー音が…

やっぱりリーク(液漏れ)でした。

 

ポンプ、オートサンプラーなどのモジュールが別々になっている装置は、モジュール毎にエラーが出るので、どのモジュールでリークが起こったのかは一目で分かります。

 

4年生はリークセンサーが何処にあるか知らなかったので、場所と、仕組みを簡単に教えて…

 

多くのHPLC装置では、各モジュールの低部、隅の辺りに液を溜めるような小さな窪みがあり、その中にリークセンサーがあります。電気抵抗のような形状で、液に濡れると、通常は絶縁されている二本の電極が導通して電流が流れて、液漏れを検知します。復帰させるには液を拭ってセンサーを乾燥させる必要がありますが、電流が流れるに伴って発熱するので、火傷しないように注意が必要です。ピンセットを使うと良いです。

 

今回は、オートサンプラー内の六方バルブの、カラムへ向かう出口ポートの接続部の高耐圧手締めコネクターが緩んでいました。

液漏れ部分を捜すにも効率良い手順があるので、それも教えました。

 

大きな企業であれば、液クロの1台や2台暫く動かなくても業務に大きな支障はないと思いますが、中小や零細企業で、ギリギリの装置で仕事をしている場合は、一刻も早く装置を復帰させることが、業務の効率化にとって重要です。

 

私が技術指導している学生達の一人と、今一緒に仕事をしています。大学でLC/MSを使っている学生さん達は、分析・データ解析等の技術を身に付けること以外にも、HPLCやMSの一寸した修理やメンテナンスはできるようにしておくと良いですよ。

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